プロフィール <B社> 業種情報通信・サービス プロフィールスタートアップとのオープンイノベーションを推進する部署は「スタートアップ推進室」が担っており、具体的な業務としては、スタートアップとの関係構築、ならびに協業提案や出資提案まで含まれる。オープンイノベーションへの取組みは社長もリーダーシップを発揮しており、会社の成長戦略の一環として位置付けている。 <C社> 業種素材・化学 プロフィールオープンイノベーションを推進する部門に所属。従来社内で検討されてこなかったスタートアップとの協業可能性について模索する日々を過ごす。 イントロダクション 量子、AI、バイオテクノロジー、半導体・電子機器、環境・エネルギー、素材、医療機器、航空宇宙等、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決を通して社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術を「ディープテック」という。 そうした技術の開発に着手するスタートアップを、「ディープテック・スタートアップ(以下、DTSU)」と呼ぶが、近年では、技術開発や新たな価値創造、社会実装を促進していく意味合いから、事業会社とDTSUが連携する事例が増えてきた。 本記事では、独自にインタビューを進めた内容を元に、DTSUとの連携に向けて日々奮闘している2社の事例を紹介する。 <B社の取組み> 情報通信・サービスの事業を展開するB社は、コア事業の利益・売上を拡大していくことを目的にDTSUとの連携を目指している。新しい技術にアンテナを張りながら、それらの技術を活用したサービスを拡充していく予定である。 B社は、オープンイノベーションに向けた取組みとして、スタートアップ支援施設の運営に加え、DX人材育成やデジタルイノベーションの創出を目的としたコミュニケーションスペースを開所している。 スタートアップ支援施設では、B社の社員が常駐し、SU人材の育成や資金調達などの支援を実施し、コミュニケーションスペースでは、SU育成の支援やITビジネス創出に向けた人材育成のための各種イベントなどを実施することで、人的交流の活性化や能力育成を広く図っている。 2つの取組みを通じてSUへの支援や人材育成に深く関わっているB社だが、DTSUとの連携を推進していくにあたって、戦略の策定、体制の構築、マインドの醸成において今後の課題を感じ、取組みの強化を図る予定である。戦略面では、SUと連携の目的を摺り合わせることや、長期的な視点を見据えて新たな事業に投資する判断に難しさがある。今後は、イノベーションのジレンマから脱すべく、経営層ともコミュニケーションを深めながら、SUとの連携テーマを絞り込み、取組みを検討・実施する予定である。 体制面では、SUと連携を推進するための人材や予算等のリソースをより拡充していく必要性を感じており、外部から新しい人材を獲得することに大きな壁があることから、いかにして有能な人材を獲得するかという観点での取組みを検討している。 マインド面においては、従業員のモチベーション維持・向上と社内の価値観のアップデートに向き合っていく予定である。SUとの連携は短期的に成果が出るものは少なく、成果が出るまでに時間がかかるケースが多い。長期的な視点でDTSUとの連携を検討していく必要があることを、共通理解として社内に醸成していくことを目指している。B社では社長からSUとの連携の重要性を発信していく中で、そうしたマインド面での壁を少しずつ解消しようと継続的な取組みを続けている。 <C社の取組み> 素材・化学の事業を展開するC社は、自社内の価値観の多様化・企業文化の改善を目的にDTSUとの連携を目指している。C社は自前主義が強い会社であり、外部から技術を導入する事が少ないことから、既存の価値観を塗り替えていくためにDTSUとの連携を検討している。 C社では、オープンイノベーションに向けた取り組みとして大学との協働を推進している。CO2活用の推進、デジタルテクノロジーの発展に貢献するIT関連材料技術の開発、次世代の医療技術につながるバイオテクノロジーの追求等に取り組み、新たな時代に求められる価値の創造に挑戦している。また、相互の研究者の交流をベースとした研究開発ネットワークを構築し、次世代の先端研究および産業技術分野の発展を担う人材育成を図っている。 積極的にオープンイノベーションに向けた取り組みを実施しているC社において、DTSUとの連携を推進するという観点では、戦略の策定、体制の構築、マインドの醸成における課題解決に奮闘している。 戦略面では、DTSUと連携することによって何を成し遂げたいのか明確にしていく必要性を感じており、ソーシング活動においても軸を持ったDTSUの選定を目指している。 体制面では、SUとの連携を実施したことのある人材がおらず、DTSUの評価項目の作成や連携の判断に難しさがあるため、まずは成功事例を作り、そこから風土改革、仕組みの整理をしていきたいと考えている。 マインド面では、自社内の価値観の多様化・企業文化の改善を目的と掲げながら、それをどのように実現していくか、解像度をあげていくことが必要と考えている。施策として、ビジネスアイデアコンテストの実施等により、新規事業を推進するマインドの醸成を目指している。また、そうした取組みを進めていく中で、SUの技術を活用できるテーマも出てきている。 【まとめ】 DTSUとの連携を推進していくには、DTSUとの連携によって何を達成したいのか明確にした上で、目標達成に向けた連携を推進できる体制を構築していくこと、会社全体としてDTSUとの連携を推進するマインドを醸成していくことがポイントになると想定される。 他の連載記事では、事業会社とDTSUとの連携に関する先駆的な事例を複数紹介している。 それら事例を参照し、事業会社とDTSUとの連携を検討・推進するための一助としてご活用いただきたい。 作成者:PwCコンサルティング合同会社 インタビュー実施日: B社:2023.12.25 C社:2024.1.5
<B社>
情報通信・サービス
スタートアップとのオープンイノベーションを推進する部署は「スタートアップ推進室」が担っており、具体的な業務としては、スタートアップとの関係構築、ならびに協業提案や出資提案まで含まれる。オープンイノベーションへの取組みは社長もリーダーシップを発揮しており、会社の成長戦略の一環として位置付けている。
<C社>
素材・化学
オープンイノベーションを推進する部門に所属。従来社内で検討されてこなかったスタートアップとの協業可能性について模索する日々を過ごす。
量子、AI、バイオテクノロジー、半導体・電子機器、環境・エネルギー、素材、医療機器、航空宇宙等、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決を通して社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術を「ディープテック」という。
そうした技術の開発に着手するスタートアップを、「ディープテック・スタートアップ(以下、DTSU)」と呼ぶが、近年では、技術開発や新たな価値創造、社会実装を促進していく意味合いから、事業会社とDTSUが連携する事例が増えてきた。
本記事では、独自にインタビューを進めた内容を元に、DTSUとの連携に向けて日々奮闘している2社の事例を紹介する。
<B社の取組み>
スタートアップ支援施設では、B社の社員が常駐し、SU人材の育成や資金調達などの支援を実施し、コミュニケーションスペースでは、SU育成の支援やITビジネス創出に向けた人材育成のための各種イベントなどを実施することで、人的交流の活性化や能力育成を広く図っている。
戦略面では、SUと連携の目的を摺り合わせることや、長期的な視点を見据えて新たな事業に投資する判断に難しさがある。今後は、イノベーションのジレンマから脱すべく、経営層ともコミュニケーションを深めながら、SUとの連携テーマを絞り込み、取組みを検討・実施する予定である。
体制面では、SUと連携を推進するための人材や予算等のリソースをより拡充していく必要性を感じており、外部から新しい人材を獲得することに大きな壁があることから、いかにして有能な人材を獲得するかという観点での取組みを検討している。
マインド面においては、従業員のモチベーション維持・向上と社内の価値観のアップデートに向き合っていく予定である。SUとの連携は短期的に成果が出るものは少なく、成果が出るまでに時間がかかるケースが多い。長期的な視点でDTSUとの連携を検討していく必要があることを、共通理解として社内に醸成していくことを目指している。B社では社長からSUとの連携の重要性を発信していく中で、そうしたマインド面での壁を少しずつ解消しようと継続的な取組みを続けている。
<C社の取組み>
戦略面では、DTSUと連携することによって何を成し遂げたいのか明確にしていく必要性を感じており、ソーシング活動においても軸を持ったDTSUの選定を目指している。
体制面では、SUとの連携を実施したことのある人材がおらず、DTSUの評価項目の作成や連携の判断に難しさがあるため、まずは成功事例を作り、そこから風土改革、仕組みの整理をしていきたいと考えている。
マインド面では、自社内の価値観の多様化・企業文化の改善を目的と掲げながら、それをどのように実現していくか、解像度をあげていくことが必要と考えている。施策として、ビジネスアイデアコンテストの実施等により、新規事業を推進するマインドの醸成を目指している。また、そうした取組みを進めていく中で、SUの技術を活用できるテーマも出てきている。
【まとめ】
DTSUとの連携を推進していくには、DTSUとの連携によって何を達成したいのか明確にした上で、目標達成に向けた連携を推進できる体制を構築していくこと、会社全体としてDTSUとの連携を推進するマインドを醸成していくことがポイントになると想定される。
他の連載記事では、事業会社とDTSUとの連携に関する先駆的な事例を複数紹介している。
それら事例を参照し、事業会社とDTSUとの連携を検討・推進するための一助としてご活用いただきたい。
インタビュー実施日:
B社:2023.12.25
C社:2024.1.5