中村 壮一郎様 プロフィール 京都大学法学部卒。大学時代はアメリカンフットボール部で主将を務める。卒業後、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。シティグループ証券を経て、2012年に独立。ベンチャー企業の財務や経営に携わる。16年10月、SEQSENSE株式会社を設立し代表取締役に就任。 イントロダクション 量子、AI、バイオテクノロジー、半導体・電子機器、環境・エネルギー、素材、医療機器、航空宇宙等、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決を通して社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術を「ディープテック」という。 そうした技術の開発に着手するスタートアップを、「ディープテック・スタートアップ」と呼ぶが、近年では、技術開発や新たな価値創造、社会実装を促進していく意味合いから、事業会社とディープテック・スタートアップが連携する事例が増えてきた。 本連載では、独自にインタビューを進めた内容を元に、ディープテック・スタートアップの視点から事業会社との連携における課題や成功ポイントについて紹介していく。 今回は、SEQSENSE株式会社で実施している事業会社との連携について、中村様に話を聞いた。(以下、本文敬称略) 会社概要 ミッション・世界を変えない 事業概要・自律移動型ロボット及びその関連製品の開発 参考:SEQSENSE株式会社 『会社情報』 「自律移動型警備ロボット SQ-2」 3次元センサー技術・自己位置推定アルゴリズム・リアルタイム経路計画アルゴリズムなど、高度なテクノロジーを駆使した自律移動型の警備ロボット。 参考:https://www.seqsense.com/product BtoBビジネスでの継続的な事業成長には事業会社との連携が必要 ─―御社は、共同開発や実証実験など、積極的に事業会社と連携されているかと思います。事業会社とはどのような経緯で繋がることが多いのでしょうか。 中村:基本的には、事業会社から声をかけてもらうことが多いですね。直接メールをいただくか、HPの問い合わせから連絡をいただくことが多いです。中には、海外の企業から問い合わせをいただくこともあります。今後は、当社からも事業会社にアプローチしていきたいと考えています。 ─―事業会社から声をかけてもらうことが多い中で、御社から事業会社へのアプローチを進めていきたいと考えるようになったきっかけはございますか。 中村:弊社の事業形態はBtoBであり、社会インフラに近しい事業を展開していると認識しています。今後更なる事業拡大を目指すために、事業会社との連携が必要になってくると考えています。よいプロダクト、サービスを開発するだけでは市場を創造することは難しく、最終的には社会の行動変容まで行うことが必要だからです。 ─―事業会社と繋がる手段として、外部の支援事業者を活用する選択肢はございますか。 中村:そうですね。エンジニアのリソースを考慮しながらも、外部の支援事業者を活用し、連携の幅を広げていきたいです。 ─―連携する事業者を選定する際は、どのような観点を重視していますか。 中村:技術の親和性を重視していますね。また、事業を推進するスピードもポイントになると思います。SUはファイナスをしながら会社を運営していることも多いため、ある程度のスピード感がないと、経営が成り立たなくなってしまいます。これまで連携してきた事業会社の中でも、社長直下でSUとの連携を推進している事業会社は意思決定が早かった印象がありますね。 事業会社が抱えるハードルにともに向き合い、スピード感のある連携に寄与 ─―続いて、契約段階のことや連携を円滑に推進していくポイントについて教えてください。 中村:事業会社の意思決定権者への専門知識の補完など、連携を円滑に進めるにあたって必要なことは、適宜サポートするようにしています。スピーディーな連携を実現するには、互いの事業や技術を十分に理解していることが重要だと思います。 ─―その他、事業会社との連携で特に力を入れていたことや、連携を円滑に推進するために事業会社をサポートしていたことはございますか。 中村:事業を軌道に乗せるところまでは、当社ができることは臨機応変に対応することに注力していました。また、開発を進めていくうえでは、距離を縮めながら、密にコミュニケーションを取ることが重要だと思います。加えて、大企業では社内の稟議等の手続きで手間や時間がかかることが多いかと思います。そうした対応についても迅速に対処できるよう、また事業会社の担当者の方の負担を軽減できるよう、担当者に必要な情報を主体的に提供するようにしています。事業会社とSUの連携を推進していくためには、事業の方向性が明確であることに加え、事業を推進するスピード感がポイントになると思います。 事業会社の事業計画をもとに、自社の要望を取り入れながらマイルストンを設定 ─―事業会社との連携に関するマイルストンやゴールはどのように設定していたのでしょうか。 中村:事業会社側の事業計画をベースにしつつ、実際の開発に必要な期間を見積もり、事業計画に反映してもらっています。事業会社側の計画を大きく変更することは難しいので、事業会社側の事情を考慮したうえで、マイルストン・ゴールを設定することになると思います。 ─―マイルストンやゴールの設定が円滑に進むように、工夫していたことはありますか。 中村:基本的に事業会社から要求に対し、技術的、期間的に実現可能か検討します。そのうえで、事業会社の要求に応えるためには、何が最も効果的な手段なのかを整理し、戦略を立てるようにしています。 事業会社との関係性を広げ、マーケットを拡大していきたい ─―本日はインタビューをお引き受けいただき、ありがとうございました。最後に、今後の方針や目標について教えてください。 中村:今後は事業会社との関係性を広げることによってマーケットを拡大していきたいですね。また、これからはファイナンスだけではなく、PLを意識して事業を推進していきたいです。 参考サイト:https://www.seqsense.com/ 作成者:PwCコンサルティング合同会社 インタビュー実施日:2024.2.13
中村 壮一郎様
京都大学法学部卒。大学時代はアメリカンフットボール部で主将を務める。卒業後、東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。シティグループ証券を経て、2012年に独立。ベンチャー企業の財務や経営に携わる。16年10月、SEQSENSE株式会社を設立し代表取締役に就任。
イントロダクション量子、AI、バイオテクノロジー、半導体・電子機器、環境・エネルギー、素材、医療機器、航空宇宙等、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決を通して社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術を「ディープテック」という。
そうした技術の開発に着手するスタートアップを、「ディープテック・スタートアップ」と呼ぶが、近年では、技術開発や新たな価値創造、社会実装を促進していく意味合いから、事業会社とディープテック・スタートアップが連携する事例が増えてきた。
本連載では、独自にインタビューを進めた内容を元に、ディープテック・スタートアップの視点から事業会社との連携における課題や成功ポイントについて紹介していく。
今回は、SEQSENSE株式会社で実施している事業会社との連携について、中村様に話を聞いた。(以下、本文敬称略)
会社概要
参考:SEQSENSE株式会社 『会社情報』
「自律移動型警備ロボット SQ-2」
3次元センサー技術・自己位置推定アルゴリズム・リアルタイム経路計画アルゴリズムなど、高度なテクノロジーを駆使した自律移動型の警備ロボット。
参考:https://www.seqsense.com/product
BtoBビジネスでの継続的な事業成長には事業会社との連携が必要
─―御社は、共同開発や実証実験など、積極的に事業会社と連携されているかと思います。事業会社とはどのような経緯で繋がることが多いのでしょうか。
中村:基本的には、事業会社から声をかけてもらうことが多いですね。直接メールをいただくか、HPの問い合わせから連絡をいただくことが多いです。中には、海外の企業から問い合わせをいただくこともあります。今後は、当社からも事業会社にアプローチしていきたいと考えています。
─―事業会社から声をかけてもらうことが多い中で、御社から事業会社へのアプローチを進めていきたいと考えるようになったきっかけはございますか。
中村:弊社の事業形態はBtoBであり、社会インフラに近しい事業を展開していると認識しています。今後更なる事業拡大を目指すために、事業会社との連携が必要になってくると考えています。よいプロダクト、サービスを開発するだけでは市場を創造することは難しく、最終的には社会の行動変容まで行うことが必要だからです。
─―事業会社と繋がる手段として、外部の支援事業者を活用する選択肢はございますか。
中村:そうですね。エンジニアのリソースを考慮しながらも、外部の支援事業者を活用し、連携の幅を広げていきたいです。
─―連携する事業者を選定する際は、どのような観点を重視していますか。
中村:技術の親和性を重視していますね。また、事業を推進するスピードもポイントになると思います。SUはファイナスをしながら会社を運営していることも多いため、ある程度のスピード感がないと、経営が成り立たなくなってしまいます。これまで連携してきた事業会社の中でも、社長直下でSUとの連携を推進している事業会社は意思決定が早かった印象がありますね。
事業会社が抱えるハードルにともに向き合い、スピード感のある連携に寄与
─―続いて、契約段階のことや連携を円滑に推進していくポイントについて教えてください。
中村:事業会社の意思決定権者への専門知識の補完など、連携を円滑に進めるにあたって必要なことは、適宜サポートするようにしています。スピーディーな連携を実現するには、互いの事業や技術を十分に理解していることが重要だと思います。
─―その他、事業会社との連携で特に力を入れていたことや、連携を円滑に推進するために事業会社をサポートしていたことはございますか。
中村:事業を軌道に乗せるところまでは、当社ができることは臨機応変に対応することに注力していました。また、開発を進めていくうえでは、距離を縮めながら、密にコミュニケーションを取ることが重要だと思います。加えて、大企業では社内の稟議等の手続きで手間や時間がかかることが多いかと思います。そうした対応についても迅速に対処できるよう、また事業会社の担当者の方の負担を軽減できるよう、担当者に必要な情報を主体的に提供するようにしています。事業会社とSUの連携を推進していくためには、事業の方向性が明確であることに加え、事業を推進するスピード感がポイントになると思います。
事業会社の事業計画をもとに、自社の要望を取り入れながらマイルストンを設定
─―事業会社との連携に関するマイルストンやゴールはどのように設定していたのでしょうか。
中村:事業会社側の事業計画をベースにしつつ、実際の開発に必要な期間を見積もり、事業計画に反映してもらっています。事業会社側の計画を大きく変更することは難しいので、事業会社側の事情を考慮したうえで、マイルストン・ゴールを設定することになると思います。
─―マイルストンやゴールの設定が円滑に進むように、工夫していたことはありますか。
中村:基本的に事業会社から要求に対し、技術的、期間的に実現可能か検討します。そのうえで、事業会社の要求に応えるためには、何が最も効果的な手段なのかを整理し、戦略を立てるようにしています。
事業会社との関係性を広げ、マーケットを拡大していきたい
─―本日はインタビューをお引き受けいただき、ありがとうございました。最後に、今後の方針や目標について教えてください。
中村:今後は事業会社との関係性を広げることによってマーケットを拡大していきたいですね。また、これからはファイナンスだけではなく、PLを意識して事業を推進していきたいです。
作成者:PwCコンサルティング合同会社
インタビュー実施日:2024.2.13