信頼と実績で半世紀お客様の満足する品質を継続的に提供する、宮城建設株式会社 取締役副社長の若林 治男氏に話を伺った。 若林 治男氏 地域が衰退し、企業が存在できる訳はない。地域民間企業の必要性を見出す ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 若林:震災復興も終了に近づき、今後の建設業を取り巻く環境は非常に厳しい状況になると判断し、また、人口減少や少子化など地域の衰退も大きな課題としてありました。既往では自社単体で建設業以外の取り組みを実施し(ガソリンスタンドやホテル業、不動産業等)、一定の成果を出していましたが、自社ではノウハウが少ない分野(BtoC)があったほか、地場企業も巻き込むことで地域全体が更に活性化する必要があると感じていました。 そのため自治体や地域民間企業が連携した地域の活性化のための取り組みが必要と考えました。 ─―地域民間企業連携の必要性を感じたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 若林:私たちの取り組みの原点は新規事業創造であり、取り組んだ結果がオープンイノベーションとなっただけと考えています。そして自社のみにあらず、地域課題解決に向け地域企業として今、責任を果たさなければ次世代に申し訳ないと思っています。その責任を果たすためには、各社が協力連携して取り組んだ方が効果的であり、地域全体が盛り上がることで若い人も増えるのではないでしょうか。 ─―地域企業責任を果たすという考えは素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 若林:仮に自社だけで実施した場合、情報収集に時間がかかるほか、様々な経費がかかる可能性があったと思います。 自社情報の積極公開でパートナー企業の信頼を得る ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 若林:具体的な取組としてアイディアは、各種セミナーやシンポジウム、異業種交流イベント、取引金融機関、コンサルタント経由で入手しています。そこから地域活性化に繋がりそうな場合は、パートナー企業などに考えを伝え、最終的にパートナーとなります。 課題としては、外部環境の変化(新型コロナウィルスの感染拡大やテレワークの普及、円安、ウクライナ侵攻等)による影響ですね。特にエネルギー部門では、外部環境の変化(調達価格の高騰)による収益が悪化しています。 ──外部環境による変化に対応するのは難しいですよね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 若林:他力依存型ではリスクヘッジができないと考え、原材料の調達先などを変更して対応しています。そしてこの経験からオープンイノベーション事業では、さらなる情報共有と課題の明確化と対応方針を決定。決定後はすぐに相対契約の行動に出て、協力企業と折衝し、契約するようにしています。 ──課題への対応方針を決めるところから協力会社との契約までのスピードを重視しているわけですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 若林:連携相手の探索は明確な理念を持ち、弊社のみの都合を優先させなければ、支援していただく企業や人財は広がっていくと考えています。 具体的には、取引金融機関やコンサルタントなどの人脈を活用しています。そこでは通常公開しないような資料までオープンにすることで、当社の取り組みを深く知り、興味をもつ企業や産学官などから問い合わせを受けることもあります。 資料としては、すべての財務諸表や長年の実績を公開し、各パートナーからは信頼度が高いと言ってもらえています。 ──自社の資料を積極的にオープンにすることで連携相手の探索がうまくいっているのですね。資料公開の他に取り組まれていることがあれば教えてください。 若林:月に一度全パートナーで打ち合わせを実施するなど、連携企業との相談体制を整えています。また、関係分野のセミナーやシンポジウム、異業種交流イベントに出席しています。 相談相手に真摯な対応に努める ──PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 若林:具体的な取り組みはありませんが、先に述べたパートナー企業との定例会や業界や協議会。自治体情報を収集し、積極的に参画するようにしています。この経験の積み重ねで会社や人材スキルの向上につながると考えています。 オープンイノベーションにおいて事業化を目指していた「北上駅東口地区都市整備事業」通称(さくらPORT・TOWNプロジェクト)では、総事業費が40億円となり金融機関からの資金調達が課題になっていました。一方で地場の金融機関とは長年の取引実績の中で相応の信頼関係を構築していたこともあり、手掛けたい事業について丁寧に説明を行い、無事事業化が果たせました。 この経験からもパートナー企業に対しては真摯な対応が必要であると考えています。 さくらPORT/TOWN ポスター ──パートナー企業への真摯な対応で連携相手の募集や事業化に繋げていらっしゃるのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 若林:課題発生の度に、パートナー(スタートアップ含む)と連携・対応できるように備えるようにしています。そしてそれには、何より自社の理念や信頼度を高めておくことが大切と考えています。 ──自社の理念や信頼度を高めておくことがポイントなのですね。最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 若林:行政もパートナーとして位置づけ、地域課題解決に取り組めば、行政内部も活性化につながると考えています。真の官民連携を目指していきたいです。 取材対象プロフィール 宮城建設株式会社 取締役副社長若林 治男氏 宮城建設株式会社 取締役副社長 宮城建設株式会社の取締役副社長として、「北上駅東口地区都市整備事業(さくらPORT・TOWNプロジェクト)」「久慈地域エネルギー株式会社」を手掛け、久慈地域エネルギー(株)の代表取締役も兼務している。 インタビュー実施日:2022年12月24日
信頼と実績で半世紀お客様の満足する品質を継続的に提供する、宮城建設株式会社 取締役副社長の若林 治男氏に話を伺った。
若林 治男氏
地域が衰退し、企業が存在できる訳はない。地域民間企業の必要性を見出す
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
若林:震災復興も終了に近づき、今後の建設業を取り巻く環境は非常に厳しい状況になると判断し、また、人口減少や少子化など地域の衰退も大きな課題としてありました。既往では自社単体で建設業以外の取り組みを実施し(ガソリンスタンドやホテル業、不動産業等)、一定の成果を出していましたが、自社ではノウハウが少ない分野(BtoC)があったほか、地場企業も巻き込むことで地域全体が更に活性化する必要があると感じていました。
そのため自治体や地域民間企業が連携した地域の活性化のための取り組みが必要と考えました。
─―地域民間企業連携の必要性を感じたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
若林:私たちの取り組みの原点は新規事業創造であり、取り組んだ結果がオープンイノベーションとなっただけと考えています。そして自社のみにあらず、地域課題解決に向け地域企業として今、責任を果たさなければ次世代に申し訳ないと思っています。その責任を果たすためには、各社が協力連携して取り組んだ方が効果的であり、地域全体が盛り上がることで若い人も増えるのではないでしょうか。
─―地域企業責任を果たすという考えは素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
若林:仮に自社だけで実施した場合、情報収集に時間がかかるほか、様々な経費がかかる可能性があったと思います。
自社情報の積極公開でパートナー企業の信頼を得る
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
若林:具体的な取組としてアイディアは、各種セミナーやシンポジウム、異業種交流イベント、取引金融機関、コンサルタント経由で入手しています。そこから地域活性化に繋がりそうな場合は、パートナー企業などに考えを伝え、最終的にパートナーとなります。
課題としては、外部環境の変化(新型コロナウィルスの感染拡大やテレワークの普及、円安、ウクライナ侵攻等)による影響ですね。特にエネルギー部門では、外部環境の変化(調達価格の高騰)による収益が悪化しています。
──外部環境による変化に対応するのは難しいですよね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
若林:他力依存型ではリスクヘッジができないと考え、原材料の調達先などを変更して対応しています。そしてこの経験からオープンイノベーション事業では、さらなる情報共有と課題の明確化と対応方針を決定。決定後はすぐに相対契約の行動に出て、協力企業と折衝し、契約するようにしています。
──課題への対応方針を決めるところから協力会社との契約までのスピードを重視しているわけですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
若林:連携相手の探索は明確な理念を持ち、弊社のみの都合を優先させなければ、支援していただく企業や人財は広がっていくと考えています。
具体的には、取引金融機関やコンサルタントなどの人脈を活用しています。そこでは通常公開しないような資料までオープンにすることで、当社の取り組みを深く知り、興味をもつ企業や産学官などから問い合わせを受けることもあります。
資料としては、すべての財務諸表や長年の実績を公開し、各パートナーからは信頼度が高いと言ってもらえています。
──自社の資料を積極的にオープンにすることで連携相手の探索がうまくいっているのですね。資料公開の他に取り組まれていることがあれば教えてください。
若林:月に一度全パートナーで打ち合わせを実施するなど、連携企業との相談体制を整えています。また、関係分野のセミナーやシンポジウム、異業種交流イベントに出席しています。
相談相手に真摯な対応に努める
──PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
若林:具体的な取り組みはありませんが、先に述べたパートナー企業との定例会や業界や協議会。自治体情報を収集し、積極的に参画するようにしています。この経験の積み重ねで会社や人材スキルの向上につながると考えています。
オープンイノベーションにおいて事業化を目指していた「北上駅東口地区都市整備事業」通称(さくらPORT・TOWNプロジェクト)では、総事業費が40億円となり金融機関からの資金調達が課題になっていました。一方で地場の金融機関とは長年の取引実績の中で相応の信頼関係を構築していたこともあり、手掛けたい事業について丁寧に説明を行い、無事事業化が果たせました。
この経験からもパートナー企業に対しては真摯な対応が必要であると考えています。
さくらPORT/TOWN ポスター
──パートナー企業への真摯な対応で連携相手の募集や事業化に繋げていらっしゃるのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
若林:課題発生の度に、パートナー(スタートアップ含む)と連携・対応できるように備えるようにしています。そしてそれには、何より自社の理念や信頼度を高めておくことが大切と考えています。
──自社の理念や信頼度を高めておくことがポイントなのですね。最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
若林:行政もパートナーとして位置づけ、地域課題解決に取り組めば、行政内部も活性化につながると考えています。真の官民連携を目指していきたいです。
取材対象プロフィール
宮城建設株式会社 取締役副社長
若林 治男氏
宮城建設株式会社 取締役副社長
宮城建設株式会社の取締役副社長として、「北上駅東口地区都市整備事業(さくらPORT・TOWNプロジェクト)」「久慈地域エネルギー株式会社」を手掛け、久慈地域エネルギー(株)の代表取締役も兼務している。