これまで蓄積された経験やノウハウ、日本の中央研究所を中心にグローバル展開された研究開発体制を駆使し、めっき技術の深化(進化)に寄与するとともに、お客様に最先端の製品・サービスの提供に努める、A社X氏に話を伺った。 理論的解明に向けた産学連携 ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 X氏:大学側からオファーを受け、募集に参加し2019年に採択されましたことがきっかけです。産学連携をすることで、社内だけでは突き詰めることができない理論的解明を課題に感じていました。 ─―大学から採択されたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 X氏:取組目標のメインは、「新製品開発」です。弊社では「めっき」はできるのですが、めっき膜を評価する材料や装置が簡単には入手ができません。次世代のパワー半導体への接合技術をいち早く製品へ結びつけるための第一歩としてどのような技術が必要なのかを見極めしたいことが本目的であり、この目的に対しては80%程度達成できたと感じています。 ─―80%程度達成とはすばらしい成果ですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 X氏:おそらく全く知見を得られないままとなっていたと思います。 模索するスケール化への決め手 ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 X氏:具体的な取組内容としては、学会や各種コンソーシアムに参加している。その中で、目的に合う共同参画者が見つかりにくいことや、費用が見合わないという課題がありました。 こうした課題の解決のために、学会への参加や特許公報等を参照し、技術情報を収集しています。今後もオープンイノベーション事業では、学会、交流会、各種コンソーシアムへの参加等に取り組んでいきたいと考えています。 ─―学会への参加や技術情報の収集がポイントなのですね。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 X氏:具体的な取組内容としては、NDAを締結し、双方の必要な技術情報を整理しています。一方で双方の時間軸の違いにより思ったように進まない時があり、課題として感じています。 こうした課題の解決のために、定期的な会議により進捗状況を相互確認し、双方の利益を確認するようにしています。 ─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 X氏:具体的な取組内容としては、新製品開発の技術情報を得ることです。一方で情報を得たものの、開発が進まない場合や短期で収益のある業務が優先となり、人材不足によりプロジェクトが止まる場合がありました。 こうした課題の解決のために、人材の確保やスケジュール感、評価方法など共同参画者との意思疎通を図る努力をしています。 ─―人材不足による課題は他社においてもよく伺う話ですね。続いて、スケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 X氏:具体的な取組内容としては、個々の商材ではスケール化が難しいため、商材を群にして立ち上げる取組みを行っています。これといったスケール化への決め手は模索中ですが、従来品と大きく製造方法が変わる場合は、製造サイドと協議しています。 課題としては、スケール化への正解を見つけるのは難しく、既存事業と比べると新規事業部が行うスケール化は規模が小さく、比べられないことですね。また、開発において法令が障壁となる場合があります。 事前に法令は確認して克服するようにしています。 関連部署を巻き込んだ協業 ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 X氏:NDAや費用関連など事務業務は関連部署に支援してもらい、技術者が技術開発に集中できるよう調整するようにしています。特に旗振り役が重要であると考えており、極力役職のある人材を充てるようにしています。 ─―関連部署や役職のある人材の充当がポイントなのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 X氏:弊社では適用事例はありません。 ─―では、最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 X氏:中小企業が簡単に参画できるような題目や参加システムが欲しいですね。広報も特定の人は見ているようですが、中小企業の関連部署の方が見やすいような工夫があればありがたいです。 取材対象プロフィール A社X氏 A社において、中央研究所の所長として従事していた。2022年12月よりシンガポールに赴任している。 インタビュー実施日:2022年12月12日
これまで蓄積された経験やノウハウ、日本の中央研究所を中心にグローバル展開された研究開発体制を駆使し、めっき技術の深化(進化)に寄与するとともに、お客様に最先端の製品・サービスの提供に努める、A社X氏に話を伺った。
理論的解明に向けた産学連携
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
X氏:大学側からオファーを受け、募集に参加し2019年に採択されましたことがきっかけです。産学連携をすることで、社内だけでは突き詰めることができない理論的解明を課題に感じていました。
─―大学から採択されたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
X氏:取組目標のメインは、「新製品開発」です。弊社では「めっき」はできるのですが、めっき膜を評価する材料や装置が簡単には入手ができません。次世代のパワー半導体への接合技術をいち早く製品へ結びつけるための第一歩としてどのような技術が必要なのかを見極めしたいことが本目的であり、この目的に対しては80%程度達成できたと感じています。
─―80%程度達成とはすばらしい成果ですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
X氏:おそらく全く知見を得られないままとなっていたと思います。
模索するスケール化への決め手
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
X氏:具体的な取組内容としては、学会や各種コンソーシアムに参加している。その中で、目的に合う共同参画者が見つかりにくいことや、費用が見合わないという課題がありました。
こうした課題の解決のために、学会への参加や特許公報等を参照し、技術情報を収集しています。今後もオープンイノベーション事業では、学会、交流会、各種コンソーシアムへの参加等に取り組んでいきたいと考えています。
─―学会への参加や技術情報の収集がポイントなのですね。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
X氏:具体的な取組内容としては、NDAを締結し、双方の必要な技術情報を整理しています。一方で双方の時間軸の違いにより思ったように進まない時があり、課題として感じています。
こうした課題の解決のために、定期的な会議により進捗状況を相互確認し、双方の利益を確認するようにしています。
─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
X氏:具体的な取組内容としては、新製品開発の技術情報を得ることです。一方で情報を得たものの、開発が進まない場合や短期で収益のある業務が優先となり、人材不足によりプロジェクトが止まる場合がありました。
こうした課題の解決のために、人材の確保やスケジュール感、評価方法など共同参画者との意思疎通を図る努力をしています。
─―人材不足による課題は他社においてもよく伺う話ですね。続いて、スケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
X氏:具体的な取組内容としては、個々の商材ではスケール化が難しいため、商材を群にして立ち上げる取組みを行っています。これといったスケール化への決め手は模索中ですが、従来品と大きく製造方法が変わる場合は、製造サイドと協議しています。
課題としては、スケール化への正解を見つけるのは難しく、既存事業と比べると新規事業部が行うスケール化は規模が小さく、比べられないことですね。また、開発において法令が障壁となる場合があります。
事前に法令は確認して克服するようにしています。
関連部署を巻き込んだ協業
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
X氏:NDAや費用関連など事務業務は関連部署に支援してもらい、技術者が技術開発に集中できるよう調整するようにしています。特に旗振り役が重要であると考えており、極力役職のある人材を充てるようにしています。
─―関連部署や役職のある人材の充当がポイントなのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
X氏:弊社では適用事例はありません。
─―では、最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
X氏:中小企業が簡単に参画できるような題目や参加システムが欲しいですね。広報も特定の人は見ているようですが、中小企業の関連部署の方が見やすいような工夫があればありがたいです。
取材対象プロフィール
A社
X氏
A社において、中央研究所の所長として従事していた。2022年12月よりシンガポールに赴任している。