記録メディアを中心とした製品の提供と通じて「人と人、人とモノ、人とコト」との関係を、確かなもの、楽しいもの、豊かなものに変えていく、Verbatim Japan株式会社 代表取締役 竹島 秀治氏に話を伺った。 竹島 秀治 協業のスピード感に魅力を感じる ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 竹島:オープンイノベーションへの取り組みを始めたきっかけとしては、社内リソースの限界を感じていたことです。人員が少ないという問題を抱えていましたが、すぐに人員採用をできず、また、採用しても恒常的なコストアップが懸念事項となっていました。そのような中、外部リソースを利用して固定費の増加を抑えた業務体制構築及び知見を持っている方との協業のスピード感に魅力を感じオープンイノベーションへの取り組みを開始しました。 具体的な事案としては国内法規制に対応した新商品の社内開発に際して、専業メーカーと協業を実施。ファームウェア、ソフトウェア関連作業を外注しました。元々業界団体でのつながりもあったことが、スムーズなオープンイノベーションへの着手につながりました。 ─―社内リソースの限界を感じたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 竹島:目標としては「収益多様化」を設定しています。収益多様化を目標設定した理由は自社の属する業界は成熟市場として縮小基調にあり、業績維持のため、新商品開発による収益確保を目標としました。具体的には既存商品に付加機能を付けた商品を発売しました。進行スケジュールとしては2021年初頭から準備をしていた商品Aは2022年初頭に発売。現在はさらなる商品の準備中です。尚、商品Aのノウハウを生かした、商品Bも現在発売アナウンスを開始したところです(2023年3月販売開始予定)。 (左から)商品Aの写真、商品Bの写真 ─―次々と商品を開発して素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 竹島:自社単体で取り組んでいた場合は現在のような新商品の発売はできていなかったと思います。もしくは商品開発の長期化に直面していたと考えますね。なぜならば、縮小する自社市況に直面する中、3年後自社はどうなっているのかという不安はありましたが、具体的な新規商品アイディアに乏しい状態だったからです。今回、開発された商品も、オープンイノベーションにより国内企業の法規制改正ニーズを把握し、末端顧客候補への最終的なプロモーションもオープンイノベーションにより外部インターネット広告を利用したので、強くそう感じます。 会社全体で意見交換、関係構築に努める姿勢 ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:具体的には、自社が「業界内では光ディスクを扱う企業である」という点を軸とし、ある程度自社内で行える範囲や事業を検討し、自社にはないソフトウェア技術などを有する第三者企業と協業を進めています。 まだ、今回オープンイノベーションによって開発された商品Aはそもそも、自社での当該新商品に関するノウハウがまったくない状況でした。 ─―では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 竹島:会社全体での取り組みとして業界内大手企業担当者との意見交換や、当該新商品に関連した他の専門メーカーより、意見やフィードバックを求めました。 また、積極的な第三者企業保有データの活用や業種交流会への参加、取引先との関係構築をしましたね。 ─―会社全体で意見交換や、関係構築に努めたのですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:本案件に参加した外部コンサルティングは、当社前身企業との繋がり、業界及び業界団体の繋がりを利用しコネクションしました。また、業界団体を通してエンドユーザーの声を聴く場を設けています。 一方で顧客先となる大企業と案件に関するスピード感の差は感じました。また、外注先については技術力に関するニーズが満たせない場合や、技術会社自体の多忙による進捗遅れもあり、マッチングの難しさを感じましたね。 ─―大企業とのスピード感とのずれは他社様からもうかがうことが多い課題です。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 竹島:具体的には、業種交流会の参加や、第三者データ会社・調査会社を利用した情報収集の強化ですね。また、ネットワークの拡大を念頭において業種交流会への参加や、展示会への出展・参加、ユーザーへの直接ヒアリングを取り組むようにしています。 ─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:特別な取り組みは行わず、通常通りのタイミングでNDAを締結し、必要に応じてミーティングを実施しています。 課題としては、下請法対応による取引条件の問題が発生したことですね。 取引条件については早い段階での確認を徹底することにしています。 ─―取引条件の確認は重要ですよね。続いで、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:具体的には、都度製作途中のサンプルを入手し、実証を重ねました。また、特許や各技術申請については進行状況に応じて申請業務を行いました。実証を行う中で、ニーズの発掘も進み機能の追加も検討しました。 課題としては、実証実験を行ったからこその課題や、新たなニーズの発見があり、それらの対応に伴って、結果的に発売スケジュールが遅れてしまったことですね。 この課題の解決では、元々自社内でノウハウのある領分・範囲だったため、自社内での改善を図りました。この経験から、想定される課題を先に予測し、スケジュールの遅れを計算にいれたスケジューリングや行動を心掛けています。 ─―新規開発においてスケジュール通りに進めることは中々難しいですね続いで、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:オープンイノベーションを活用した商品Aの発売後、拡販に向けて自社インターネットサイトの充実やSNSプロモーションを行いました。 そこでは自社ブランド・サービスの国内認知度が自社想定よりも低いという課題に直面しました。また、元々法規制の変更に伴うニーズを見越した商品開発・販売を行いましたが、国内情勢を鑑みた法規制自体の延期が発生し需要縮小が発生してしまいました。 こうした課題の解決のために、ニュースサイト上の広告や動画広告など、今まで利用していなかった広告会社・広告媒体の利用を進めました。 ─―では、続いてスケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 竹島:具体的には、ソフトウェアの現地語対応はまだであるが、英語版パンフレットの作成など、海外展開を開始しました。 製品の量産体制における課題はありませんが、海外展開における言語対応が課題となっています。また、海外のグループ法人との販売に関する調整(手数料規定など)も課題ですね。 こうした課題の解決のために、グループ間での調整を図り利益、販売状況の調整を実施する必要があると考えています。 業種を問わない交流から協業先を見つける ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 竹島:3カ月に1回程の頻度で異業種交流会や業種交流会に参加し、様々な知見や意見を得て、協業先となりうるような企業と交流を図っています。 ─―交流会を通じて協業先を選定しているのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 竹島:現状では特段注意はしていません。 ─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 竹島:行政発信での企業間マッチングの場の提供をしてほしいです。今回商品化した商品Aは今後の法規制ニーズを見越して開発、販売されたものの、結果的に法規制自体が(対応状況の観点などから)延期となってしまい、ニーズの縮小が見られました。そのため、今後は安易な法規制の延期ではなく、補助金の給付などにより、対応促進を図る方向での行政取り組みなども検討いただきたいです。 また、みなし大企業にも手当や補助を検討していただきたいです。 取材対象プロフィール Verbatim Japan株式会社 代表取締役竹島 秀治氏 1985年三菱化成工業(株)(現三菱ケミカル(株))入社以来様々な光ディスクの開発に従事。ISO規格等、光ディスクの標準化活動に従事。2012年からは、耐久性に優れる業務用光ディスクを貴重なデータの長期保存への活用を推進するためアーカイブ事業開拓に従事。 2014年から三菱ケミカルメディア(株)取締役兼Chief Technology Officerに就任。三菱ケミカル社からCMC Magnetics社へのストレージ事業の事業移管に伴い2020年からVerbatim Japan社の代表取締役に就任。民生用光ディスクを中心にUSBメモリーやSDカード等の記録媒体やパソコン周辺機器事業を展開。世の中で求められる特徴のある製品を使用方法とともに提供することを目指す。 インタビュー実施日:2022年12月24日
記録メディアを中心とした製品の提供と通じて「人と人、人とモノ、人とコト」との関係を、確かなもの、楽しいもの、豊かなものに変えていく、Verbatim Japan株式会社 代表取締役 竹島 秀治氏に話を伺った。
竹島 秀治
協業のスピード感に魅力を感じる
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
竹島:オープンイノベーションへの取り組みを始めたきっかけとしては、社内リソースの限界を感じていたことです。人員が少ないという問題を抱えていましたが、すぐに人員採用をできず、また、採用しても恒常的なコストアップが懸念事項となっていました。そのような中、外部リソースを利用して固定費の増加を抑えた業務体制構築及び知見を持っている方との協業のスピード感に魅力を感じオープンイノベーションへの取り組みを開始しました。
具体的な事案としては国内法規制に対応した新商品の社内開発に際して、専業メーカーと協業を実施。ファームウェア、ソフトウェア関連作業を外注しました。元々業界団体でのつながりもあったことが、スムーズなオープンイノベーションへの着手につながりました。
─―社内リソースの限界を感じたところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
竹島:目標としては「収益多様化」を設定しています。収益多様化を目標設定した理由は自社の属する業界は成熟市場として縮小基調にあり、業績維持のため、新商品開発による収益確保を目標としました。具体的には既存商品に付加機能を付けた商品を発売しました。進行スケジュールとしては2021年初頭から準備をしていた商品Aは2022年初頭に発売。現在はさらなる商品の準備中です。尚、商品Aのノウハウを生かした、商品Bも現在発売アナウンスを開始したところです(2023年3月販売開始予定)。
(左から)商品Aの写真、商品Bの写真
─―次々と商品を開発して素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
竹島:自社単体で取り組んでいた場合は現在のような新商品の発売はできていなかったと思います。もしくは商品開発の長期化に直面していたと考えますね。なぜならば、縮小する自社市況に直面する中、3年後自社はどうなっているのかという不安はありましたが、具体的な新規商品アイディアに乏しい状態だったからです。今回、開発された商品も、オープンイノベーションにより国内企業の法規制改正ニーズを把握し、末端顧客候補への最終的なプロモーションもオープンイノベーションにより外部インターネット広告を利用したので、強くそう感じます。
会社全体で意見交換、関係構築に努める姿勢
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:具体的には、自社が「業界内では光ディスクを扱う企業である」という点を軸とし、ある程度自社内で行える範囲や事業を検討し、自社にはないソフトウェア技術などを有する第三者企業と協業を進めています。
まだ、今回オープンイノベーションによって開発された商品Aはそもそも、自社での当該新商品に関するノウハウがまったくない状況でした。
─―では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
竹島:会社全体での取り組みとして業界内大手企業担当者との意見交換や、当該新商品に関連した他の専門メーカーより、意見やフィードバックを求めました。 また、積極的な第三者企業保有データの活用や業種交流会への参加、取引先との関係構築をしましたね。
─―会社全体で意見交換や、関係構築に努めたのですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:本案件に参加した外部コンサルティングは、当社前身企業との繋がり、業界及び業界団体の繋がりを利用しコネクションしました。また、業界団体を通してエンドユーザーの声を聴く場を設けています。
一方で顧客先となる大企業と案件に関するスピード感の差は感じました。また、外注先については技術力に関するニーズが満たせない場合や、技術会社自体の多忙による進捗遅れもあり、マッチングの難しさを感じましたね。
─―大企業とのスピード感とのずれは他社様からもうかがうことが多い課題です。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
竹島:具体的には、業種交流会の参加や、第三者データ会社・調査会社を利用した情報収集の強化ですね。また、ネットワークの拡大を念頭において業種交流会への参加や、展示会への出展・参加、ユーザーへの直接ヒアリングを取り組むようにしています。
─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:特別な取り組みは行わず、通常通りのタイミングでNDAを締結し、必要に応じてミーティングを実施しています。
課題としては、下請法対応による取引条件の問題が発生したことですね。
取引条件については早い段階での確認を徹底することにしています。
─―取引条件の確認は重要ですよね。続いで、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:具体的には、都度製作途中のサンプルを入手し、実証を重ねました。また、特許や各技術申請については進行状況に応じて申請業務を行いました。実証を行う中で、ニーズの発掘も進み機能の追加も検討しました。
課題としては、実証実験を行ったからこその課題や、新たなニーズの発見があり、それらの対応に伴って、結果的に発売スケジュールが遅れてしまったことですね。
この課題の解決では、元々自社内でノウハウのある領分・範囲だったため、自社内での改善を図りました。この経験から、想定される課題を先に予測し、スケジュールの遅れを計算にいれたスケジューリングや行動を心掛けています。
─―新規開発においてスケジュール通りに進めることは中々難しいですね続いで、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:オープンイノベーションを活用した商品Aの発売後、拡販に向けて自社インターネットサイトの充実やSNSプロモーションを行いました。
そこでは自社ブランド・サービスの国内認知度が自社想定よりも低いという課題に直面しました。また、元々法規制の変更に伴うニーズを見越した商品開発・販売を行いましたが、国内情勢を鑑みた法規制自体の延期が発生し需要縮小が発生してしまいました。
こうした課題の解決のために、ニュースサイト上の広告や動画広告など、今まで利用していなかった広告会社・広告媒体の利用を進めました。
─―では、続いてスケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
竹島:具体的には、ソフトウェアの現地語対応はまだであるが、英語版パンフレットの作成など、海外展開を開始しました。
製品の量産体制における課題はありませんが、海外展開における言語対応が課題となっています。また、海外のグループ法人との販売に関する調整(手数料規定など)も課題ですね。
こうした課題の解決のために、グループ間での調整を図り利益、販売状況の調整を実施する必要があると考えています。
業種を問わない交流から協業先を見つける
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
竹島:3カ月に1回程の頻度で異業種交流会や業種交流会に参加し、様々な知見や意見を得て、協業先となりうるような企業と交流を図っています。
─―交流会を通じて協業先を選定しているのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
竹島:現状では特段注意はしていません。
─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
竹島:行政発信での企業間マッチングの場の提供をしてほしいです。今回商品化した商品Aは今後の法規制ニーズを見越して開発、販売されたものの、結果的に法規制自体が(対応状況の観点などから)延期となってしまい、ニーズの縮小が見られました。そのため、今後は安易な法規制の延期ではなく、補助金の給付などにより、対応促進を図る方向での行政取り組みなども検討いただきたいです。
また、みなし大企業にも手当や補助を検討していただきたいです。
取材対象プロフィール
Verbatim Japan株式会社 代表取締役
竹島 秀治氏
1985年三菱化成工業(株)(現三菱ケミカル(株))入社以来様々な光ディスクの開発に従事。ISO規格等、光ディスクの標準化活動に従事。2012年からは、耐久性に優れる業務用光ディスクを貴重なデータの長期保存への活用を推進するためアーカイブ事業開拓に従事。
2014年から三菱ケミカルメディア(株)取締役兼Chief Technology Officerに就任。三菱ケミカル社からCMC Magnetics社へのストレージ事業の事業移管に伴い2020年からVerbatim Japan社の代表取締役に就任。民生用光ディスクを中心にUSBメモリーやSDカード等の記録媒体やパソコン周辺機器事業を展開。世の中で求められる特徴のある製品を使用方法とともに提供することを目指す。