ウェルネスと安全に関するホワイトラベルのソリューションスペシャリストである、Navigilジャパン株式会社 代表取締役カントリーマネージャーの外山 元夫氏に話を伺った。 外山 元夫氏 日本独自の収益モデル確立を目指す ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 外山:日本支社設立(2020年7月)の準備を始めた2019年秋から、欧州での既存の取組から、日本においてもオープンイノベーションが必須とみなしていました。とりあえずパートナーを探索しながらも、日本の商習慣・規制に合わせて、パートナーを決めていくことが大事であると考えていましたが、実質1名での活動であり、どこまで具体的な話が進んでいくかが未知数でした。 ─―実質1名での活動から、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 外山:「収益多様化」を目標として設定しています。欧州でのビジネスモデルである保険業界・テレケア業界との協業にとらわれず、日本独自の収益モデルを確立したいと考えていました。現在もまだ探索中ですが、建設現場への導入、救急技術蘇生術を有するボランティアを集めた協業など、複数の候補は出てきているところです。なお、これらは日本で事業化する場合は協力したいという候補も含まれています。 ─―日本独自の収益モデルの確率を目指すとは素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 外山:他社との協業を前提にスタートしており、オープンイノベーションを実施しなかった場合は日本市場からの撤退となっていると思います。 相手の興味をひくコンタクト ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 外山:具体的には、様々なイベントなどでパートナー候補と出会い、双方向の議論の中で、ビジネスモデルを模索しています。 課題としては、相手が大企業の場合、意志決定が非常に遅いことですね。また担当者が決まらないと先に進まないなど、弊害になることが多いです。 ─―企業規模による意思決定のスピード差は他の企業様でもうかがいますね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 外山:相手方窓口と、メール、WEB会議、訪問などによる定期的なコンタクトを実施し、パートナー候補のリスト(約20社)に基づき、計画的にコンタクトしています。また、適宜、関連する展示会やセミナーなどには参加し、新規候補先の確保にも注力しています。 ─―続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 外山:具体的には、マッチングイベント、展示会等にビジターとして積極的に参加し、コネクション作りに取り組んでいます。 課題としては、フィンランドに本社を置くNavigil Oy(従業員数約40名)における世界戦略の中で、意思決定のスピードが早く、日本の数倍の市場規模を誇る米国を優先することになっています。このため、日本での展開見通しが明確になっておらず、相手先に具体的な提案が出来ていないことですね。 ─―では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください 外山:相手方の興味を引き留めるための定期的なコンタクトです。また、当社からの積極的な情報発信をしています。 また、2019年10月に経済産業省主催の「2nd Well Aging Society Summit Asia-Japan(WASS)」に参加しました。そこで、JETRO担当者を紹介してもらい、交流を図っています。今後はJETROのHP内で当社のビジネスを取り上げた記事を書いてもらえるとのことで、様々なロビー活動に注力していきたいと考えています。 WASSでの外山氏 ─―積極的なロビー活動に注力とは素晴らしいですね。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 外山:具体的には、オンライン会議などを活用しています。また、Navigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、サンプルの提供及び貸与を行っています。 課題としては、いまだ売上は数万円しか計上出来ておらず、自社の日本での与信レベルが低いので、大手企業などを主体に杓子定規に関係を断られたケースが発生したことですね。 こうした課題の解決のために、信用調査会社からの調査依頼が入った際は今後のビジネスモデルも含め、説明し、少しでも与信を高めるよう努力しています。またNavigil Oyの決算内容も開示しています。 現在は資本金が100万円ですが、信用力の強化という面で、Navigil Oyから300万円へ増資してもらうことを検討しているところです。 ─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 外山:具体的には、Navigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、サンプルの提供及び貸与を実施しています。 課題としては、相手方担当者が年配の方でITに不慣れな場合、ログインすら出来ないこと。その結果、評価が進まず、沙汰止みになったケースがありました。 こうした課題の解決のために、先方へのオンライン会議やメール、電話などでは無く、訪問して設定までこちらで対応するなど、手取り足取りの説明を実施しています。 また、先方へのオンライン会議やメール、電話などでは無く、ファーストアプローチから訪問するなどの対策を取っています。 面談を通じて担当者と意思疎通を図る ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 外山:担当者の熱意がカギになると考えているので、結局は面談などでの交流が重要と思います。 ─―たしかに面談を通して担当者と意思疎通を図ることは大切ですよね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 外山:相手側に資金が足りない場合はNavigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、無償で貸与しています。 ─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 外山:静岡県のTechBeatなどは安価な参加費でイベントに参加でき、このような企画やイベントをぜひ行政の方で、定期的に開催してほしいです。また、福祉など、行政のイノベーションの窓口があれば良いと思います。 取材対象プロフィール Navigilジャパン株式会社 代表取締役カントリーマネージャー外山 元夫氏 代表取締役カントリーマネージャーとして、実質的に当社運営の指揮にあたっている。氏の経歴は1984年4月にセイコーインスツル(株)(千葉市美浜区)に入社し、技術担当として勤務。1992年7月に(株)村田製作所(京都府長岡京市)に入社し、技術担当として勤務。1995年2月にアプライドマテリアルズジャパン(株)(東京都港区)に勤務し、テクニカルサポートとして勤務。1999年1月にノキア・ジャパン(株)(東京都目黒区)に入社し、アジア新技術導入・購買担当として10年以上勤務。以後、イーストマンケミカルジャパン(株)(東京都港区)、日祥(株)(東京都千代田区)、キャタレント・ジャパン(株)(東京都港区)にて勤務。2018年1月に退社して、季布テクノ(横浜市港北区)として個人創業。2020年7月の当社設立に伴い、代表取締役カントリーマネージャーに就任、今日に至る。なお、ZOBELE GROUP(イタリア)のコンサルタントも兼務している。英検1級、仏検2級などを有する。主に高齢者や認知症患者向けの遠隔ケア腕時計の販売保守と分析データの販売を行っている。フィンランド本社と協議しながら協業先を探索している。PRタイムズ、高齢者住宅新聞などへの広告出稿、ビジターとしての展示会参加、マッチングイベント参加などにより、協業先候補を探っている。 インタビュー実施日:2022年11月18日
ウェルネスと安全に関するホワイトラベルのソリューションスペシャリストである、Navigilジャパン株式会社 代表取締役カントリーマネージャーの外山 元夫氏に話を伺った。
外山 元夫氏
日本独自の収益モデル確立を目指す
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
外山:日本支社設立(2020年7月)の準備を始めた2019年秋から、欧州での既存の取組から、日本においてもオープンイノベーションが必須とみなしていました。とりあえずパートナーを探索しながらも、日本の商習慣・規制に合わせて、パートナーを決めていくことが大事であると考えていましたが、実質1名での活動であり、どこまで具体的な話が進んでいくかが未知数でした。
─―実質1名での活動から、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
外山:「収益多様化」を目標として設定しています。欧州でのビジネスモデルである保険業界・テレケア業界との協業にとらわれず、日本独自の収益モデルを確立したいと考えていました。現在もまだ探索中ですが、建設現場への導入、救急技術蘇生術を有するボランティアを集めた協業など、複数の候補は出てきているところです。なお、これらは日本で事業化する場合は協力したいという候補も含まれています。
─―日本独自の収益モデルの確率を目指すとは素晴らしいですね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
外山:他社との協業を前提にスタートしており、オープンイノベーションを実施しなかった場合は日本市場からの撤退となっていると思います。
相手の興味をひくコンタクト
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
外山:具体的には、様々なイベントなどでパートナー候補と出会い、双方向の議論の中で、ビジネスモデルを模索しています。
課題としては、相手が大企業の場合、意志決定が非常に遅いことですね。また担当者が決まらないと先に進まないなど、弊害になることが多いです。
─―企業規模による意思決定のスピード差は他の企業様でもうかがいますね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
外山:相手方窓口と、メール、WEB会議、訪問などによる定期的なコンタクトを実施し、パートナー候補のリスト(約20社)に基づき、計画的にコンタクトしています。また、適宜、関連する展示会やセミナーなどには参加し、新規候補先の確保にも注力しています。
─―続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
外山:具体的には、マッチングイベント、展示会等にビジターとして積極的に参加し、コネクション作りに取り組んでいます。
課題としては、フィンランドに本社を置くNavigil Oy(従業員数約40名)における世界戦略の中で、意思決定のスピードが早く、日本の数倍の市場規模を誇る米国を優先することになっています。このため、日本での展開見通しが明確になっておらず、相手先に具体的な提案が出来ていないことですね。
─―では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください
外山:相手方の興味を引き留めるための定期的なコンタクトです。また、当社からの積極的な情報発信をしています。
また、2019年10月に経済産業省主催の「2nd Well Aging Society Summit Asia-Japan(WASS)」に参加しました。そこで、JETRO担当者を紹介してもらい、交流を図っています。今後はJETROのHP内で当社のビジネスを取り上げた記事を書いてもらえるとのことで、様々なロビー活動に注力していきたいと考えています。
WASSでの外山氏
─―積極的なロビー活動に注力とは素晴らしいですね。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
外山:具体的には、オンライン会議などを活用しています。また、Navigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、サンプルの提供及び貸与を行っています。
課題としては、いまだ売上は数万円しか計上出来ておらず、自社の日本での与信レベルが低いので、大手企業などを主体に杓子定規に関係を断られたケースが発生したことですね。
こうした課題の解決のために、信用調査会社からの調査依頼が入った際は今後のビジネスモデルも含め、説明し、少しでも与信を高めるよう努力しています。またNavigil Oyの決算内容も開示しています。
現在は資本金が100万円ですが、信用力の強化という面で、Navigil Oyから300万円へ増資してもらうことを検討しているところです。
─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
外山:具体的には、Navigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、サンプルの提供及び貸与を実施しています。
課題としては、相手方担当者が年配の方でITに不慣れな場合、ログインすら出来ないこと。その結果、評価が進まず、沙汰止みになったケースがありました。
こうした課題の解決のために、先方へのオンライン会議やメール、電話などでは無く、訪問して設定までこちらで対応するなど、手取り足取りの説明を実施しています。 また、先方へのオンライン会議やメール、電話などでは無く、ファーストアプローチから訪問するなどの対策を取っています。
面談を通じて担当者と意思疎通を図る
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
外山:担当者の熱意がカギになると考えているので、結局は面談などでの交流が重要と思います。
─―たしかに面談を通して担当者と意思疎通を図ることは大切ですよね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
外山:相手側に資金が足りない場合はNavigil Oyから遠隔ケア腕時計を送って貰い、無償で貸与しています。
─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
外山:静岡県のTechBeatなどは安価な参加費でイベントに参加でき、このような企画やイベントをぜひ行政の方で、定期的に開催してほしいです。また、福祉など、行政のイノベーションの窓口があれば良いと思います。
取材対象プロフィール
Navigilジャパン株式会社 代表取締役カントリーマネージャー
外山 元夫氏
代表取締役カントリーマネージャーとして、実質的に当社運営の指揮にあたっている。氏の経歴は1984年4月にセイコーインスツル(株)(千葉市美浜区)に入社し、技術担当として勤務。1992年7月に(株)村田製作所(京都府長岡京市)に入社し、技術担当として勤務。1995年2月にアプライドマテリアルズジャパン(株)(東京都港区)に勤務し、テクニカルサポートとして勤務。1999年1月にノキア・ジャパン(株)(東京都目黒区)に入社し、アジア新技術導入・購買担当として10年以上勤務。以後、イーストマンケミカルジャパン(株)(東京都港区)、日祥(株)(東京都千代田区)、キャタレント・ジャパン(株)(東京都港区)にて勤務。2018年1月に退社して、季布テクノ(横浜市港北区)として個人創業。2020年7月の当社設立に伴い、代表取締役カントリーマネージャーに就任、今日に至る。なお、ZOBELE GROUP(イタリア)のコンサルタントも兼務している。英検1級、仏検2級などを有する。主に高齢者や認知症患者向けの遠隔ケア腕時計の販売保守と分析データの販売を行っている。フィンランド本社と協議しながら協業先を探索している。PRタイムズ、高齢者住宅新聞などへの広告出稿、ビジターとしての展示会参加、マッチングイベント参加などにより、協業先候補を探っている。