多くの人々に「感動を与え」「心から喜んで頂ける」商品の提供に努める、株式会社Insect Shield Japan 専務取締役 事業部長 堀江 一男氏に話を伺った。 国内薬事法が壁となる ─―まず、御社を代表する技術であるインセクトシールド虫よけ技術の開発経緯について教えてください。 堀江:インセクトシールド社は米国本社。インセクトシールドジャパンは子会社です。1996年、Insect Shield LLCの前身「防虫加工技術研究所」へ米軍からの依頼があったことがきっかけです。 過酷な環境に身を置く米軍隊員は、マラリアなど虫が媒介する感染症に感染する恐れがあります。虫よけ成分のペルメトリンは安全性に優れていますが、繊維に染み込みづらく開発はたいへん困難なものでした。インセクトシールドは接着成分から開発を行い、ペルメトリンを繊維に固着させることに成功しました。 そこから、効果と安全性を検証するため、5年間の野外試験などを行い、2001年製品化にこぎつけました。現在、世界47か国での販売許可を得て、感染症対策として多くの団体から推薦を受け、世界へ拡大しています。 ─―大変なご苦労の中で完成した技術だったのですね。続いてオープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 堀江:独自に開発されたインセクトシールド加工した衣服などは、小さな足のある不快害虫を寄せ付けにくくし、繰り返しの洗濯でも、虫よけ効果が持続します。その技術で新事業を創出するため、オープンイノベーションで日本国内における取引先を獲得しようと企業が集まるイベントで展示、企業訪問などを行いますが、効果を得るまでの長期間の契約ができないため、現在、取組は止まっている状態です。 ─―ではどのようにオープンイノベーションの目的を設定していますか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 堀江:独自に開発されたインセクトシールド加工による虫よけ効果で新事業を創出するため、オープンイノベーションで日本国内における取引先を獲得しようと企業が集まるイベントで展示、企業訪問などを行っていましたが、日本国内における法律(薬事法)、エビデンスの証明(防虫効果)に阻まれることもあって結果が出にくく、現在、取組は進んでいないですね。 イベントでの展示 ─―法律があるので製品化は中々難しいですよね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 堀江:イベントなどの参加では話は聞いてもらえますが、成約までには進まないため、オープンイノベーションによる効果が出難く、現在も自社単体で各種取組を進めており、現状の進捗と比較して、大きく変わっていないですね。 国内でのEPA登録の認知を促す ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:米国環境保護庁(EPA)のカテゴリーⅣに登録され、防虫効果、安全性の高い技術と評価はありますが、日本国内で販売するには、虫刺されなどが生じた際その効果を証明するためのエビデンスには繋がらず、販売即促進に結びつかいないのが現状ですね。虫よけ加工技術を活かし、防虫製品として販売するためには薬事法があり、それに準拠した場合するには時間を要する他、製品化に結びつきにくいと思います。 当社の虫よけ加工技術を施した製品は米国環境保護庁(EPA)のカテゴリーⅣに登録されていますが、日本国内での評価・エビデンスには繋がらず、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではないため、表現の制限により販促しづらいのが現状です。また、防虫製品として販売するための薬事法への準拠はハードルが高いと思います。 ─―では、そういった課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 堀江:ガーデンショー(展示会)の参加により情報収集を行っています。また、防虫効果を活かすため、薬事法を研究しています。 現時点では日本国内の法律、加工技術のエビデンスが問題であり、オープンイノベーションの取り組みでは解決できないと思います。 ─―オープンイノベーションで解決するのは難しい課題ですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:取引先メーカーが当社の虫よけ加工技術を施した製品を販売する場合に、具体的な防虫効果による宣伝し難く、消費者が防虫効果を実感する前に取引が無くなるケースが多くありました。 こうした課題の解決のために、製品に虫よけ加工技術を施すため、技術を理解してもらい、その技術を理解した上で、製品の差別化や他の製品に利用してもらいたいですね。 また、日本国内における米国環境保護庁(EPA)登録製品のエビデンス、認知度を高めることも重要だと考えています。 ─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:具体的には、当社の虫よけ加工技術に興味がある企業、引き合いのある企業に訪問し、説明をしています。 課題としては、面白い技術とは言われますが、製品化に至るまでに様々な問題により、製品に虫よけ加工技術を施すことができないケースが多いことですね。 こうした課題の解決のために、ガーデンショーなどに参加し、東京都中小企業振興公社で登録をしています。 ただ、効果がなく、人手もいないため、現状の取引先との取引拡大に注力しています。 ガーデンショーでのブース ─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:これまでに屋外で活動する国土防衛・消防などのアウトドアで活動する人向けの衣料品に防虫加工するように営業しましたが、成約に至りませんでした。 理由としては、防虫効果を取り入れるメリットを提供できず、コストが合わなかったからですね。 こうした経験から、虫よけのために殺虫薬を利用しないため安全性が高いことをアピールしたことで、ベビー服・子供服メーカーとの取引が始まりました。 ─―安全性という自社の強みが取引につながったのですね。続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:虫よけ加工技術による防虫効果の証明、保証ができないため製品化に至らないのが現状です。また、虫よけ加工技術を利用しているメーカーがその技術を理解し、販売方法を工夫しないと長期的な利用に至らないですね。 こうした課題の解決のために、虫よけ加工技術を施した衣服を着てもらい、その体験によりリピーターとなってもらうことに力を入れています。 ─―体験からリピーター獲得につなげることがポイントなのですね。続いて、スケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 堀江:虫よけ加工技術を施した製品の宣伝・販売方法には表現の制限があるため、その特徴を宣伝し難いですね。 また、虫よけ加工技術を施した製品は内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではないため、表現の制限により販促しづらいのが現状です。 国内の法律と向き合ってイノベーションを進める ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 堀江:特別な取組、工夫は現在行っていません。 ─―では、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 堀江:現在はスタートアップとPoCや事業化を進める予定はありません。 ─―最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 堀江:虫よけ(殺虫)の表現やエビデンス、薬事法などで、国内における製品販売による制限が多いため、販売促進しづらい点があるので、何か良いアイディアがあれば教えてほしいです。 取材対象プロフィール 株式会社Insect Shield Japan 専務取締役 事業部長堀江 一男氏 2018年、株式会社Insect Shield Japanに入社、専務取締役事業部長に就任している。具体的な業務としては、虫よけ加工製品の販売・普及・業務全般を担当している。 インタビュー実施日:2022年11月25日
多くの人々に「感動を与え」「心から喜んで頂ける」商品の提供に努める、株式会社Insect Shield Japan 専務取締役 事業部長 堀江 一男氏に話を伺った。
国内薬事法が壁となる
─―まず、御社を代表する技術であるインセクトシールド虫よけ技術の開発経緯について教えてください。
堀江:インセクトシールド社は米国本社。インセクトシールドジャパンは子会社です。1996年、Insect Shield LLCの前身「防虫加工技術研究所」へ米軍からの依頼があったことがきっかけです。
過酷な環境に身を置く米軍隊員は、マラリアなど虫が媒介する感染症に感染する恐れがあります。虫よけ成分のペルメトリンは安全性に優れていますが、繊維に染み込みづらく開発はたいへん困難なものでした。インセクトシールドは接着成分から開発を行い、ペルメトリンを繊維に固着させることに成功しました。
そこから、効果と安全性を検証するため、5年間の野外試験などを行い、2001年製品化にこぎつけました。現在、世界47か国での販売許可を得て、感染症対策として多くの団体から推薦を受け、世界へ拡大しています。
─―大変なご苦労の中で完成した技術だったのですね。続いてオープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
堀江:独自に開発されたインセクトシールド加工した衣服などは、小さな足のある不快害虫を寄せ付けにくくし、繰り返しの洗濯でも、虫よけ効果が持続します。その技術で新事業を創出するため、オープンイノベーションで日本国内における取引先を獲得しようと企業が集まるイベントで展示、企業訪問などを行いますが、効果を得るまでの長期間の契約ができないため、現在、取組は止まっている状態です。
─―ではどのようにオープンイノベーションの目的を設定していますか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
堀江:独自に開発されたインセクトシールド加工による虫よけ効果で新事業を創出するため、オープンイノベーションで日本国内における取引先を獲得しようと企業が集まるイベントで展示、企業訪問などを行っていましたが、日本国内における法律(薬事法)、エビデンスの証明(防虫効果)に阻まれることもあって結果が出にくく、現在、取組は進んでいないですね。
イベントでの展示
─―法律があるので製品化は中々難しいですよね。もし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
堀江:イベントなどの参加では話は聞いてもらえますが、成約までには進まないため、オープンイノベーションによる効果が出難く、現在も自社単体で各種取組を進めており、現状の進捗と比較して、大きく変わっていないですね。
国内でのEPA登録の認知を促す
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:米国環境保護庁(EPA)のカテゴリーⅣに登録され、防虫効果、安全性の高い技術と評価はありますが、日本国内で販売するには、虫刺されなどが生じた際その効果を証明するためのエビデンスには繋がらず、販売即促進に結びつかいないのが現状ですね。虫よけ加工技術を活かし、防虫製品として販売するためには薬事法があり、それに準拠した場合するには時間を要する他、製品化に結びつきにくいと思います。
当社の虫よけ加工技術を施した製品は米国環境保護庁(EPA)のカテゴリーⅣに登録されていますが、日本国内での評価・エビデンスには繋がらず、その内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではないため、表現の制限により販促しづらいのが現状です。また、防虫製品として販売するための薬事法への準拠はハードルが高いと思います。
─―では、そういった課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
堀江:ガーデンショー(展示会)の参加により情報収集を行っています。また、防虫効果を活かすため、薬事法を研究しています。
現時点では日本国内の法律、加工技術のエビデンスが問題であり、オープンイノベーションの取り組みでは解決できないと思います。
─―オープンイノベーションで解決するのは難しい課題ですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:取引先メーカーが当社の虫よけ加工技術を施した製品を販売する場合に、具体的な防虫効果による宣伝し難く、消費者が防虫効果を実感する前に取引が無くなるケースが多くありました。
こうした課題の解決のために、製品に虫よけ加工技術を施すため、技術を理解してもらい、その技術を理解した上で、製品の差別化や他の製品に利用してもらいたいですね。
また、日本国内における米国環境保護庁(EPA)登録製品のエビデンス、認知度を高めることも重要だと考えています。
─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:具体的には、当社の虫よけ加工技術に興味がある企業、引き合いのある企業に訪問し、説明をしています。
課題としては、面白い技術とは言われますが、製品化に至るまでに様々な問題により、製品に虫よけ加工技術を施すことができないケースが多いことですね。
こうした課題の解決のために、ガーデンショーなどに参加し、東京都中小企業振興公社で登録をしています。
ただ、効果がなく、人手もいないため、現状の取引先との取引拡大に注力しています。
ガーデンショーでのブース
─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:これまでに屋外で活動する国土防衛・消防などのアウトドアで活動する人向けの衣料品に防虫加工するように営業しましたが、成約に至りませんでした。
理由としては、防虫効果を取り入れるメリットを提供できず、コストが合わなかったからですね。
こうした経験から、虫よけのために殺虫薬を利用しないため安全性が高いことをアピールしたことで、ベビー服・子供服メーカーとの取引が始まりました。
─―安全性という自社の強みが取引につながったのですね。続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:虫よけ加工技術による防虫効果の証明、保証ができないため製品化に至らないのが現状です。また、虫よけ加工技術を利用しているメーカーがその技術を理解し、販売方法を工夫しないと長期的な利用に至らないですね。
こうした課題の解決のために、虫よけ加工技術を施した衣服を着てもらい、その体験によりリピーターとなってもらうことに力を入れています。
─―体験からリピーター獲得につなげることがポイントなのですね。続いて、スケール化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
堀江:虫よけ加工技術を施した製品の宣伝・販売方法には表現の制限があるため、その特徴を宣伝し難いですね。
また、虫よけ加工技術を施した製品は内容の正確性や有効性などについて何らかの保証をできるものではないため、表現の制限により販促しづらいのが現状です。
国内の法律と向き合ってイノベーションを進める
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
堀江:特別な取組、工夫は現在行っていません。
─―では、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
堀江:現在はスタートアップとPoCや事業化を進める予定はありません。
─―最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
堀江:虫よけ(殺虫)の表現やエビデンス、薬事法などで、国内における製品販売による制限が多いため、販売促進しづらい点があるので、何か良いアイディアがあれば教えてほしいです。
取材対象プロフィール
株式会社Insect Shield Japan 専務取締役 事業部長
堀江 一男氏
2018年、株式会社Insect Shield Japanに入社、専務取締役事業部長に就任している。具体的な業務としては、虫よけ加工製品の販売・普及・業務全般を担当している。