「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、豊かな社会の実現へ貢献する、井関農機株式会社 総合企画部 戦略企画室 副室長の髙橋 努氏に話を伺った。 髙橋 努氏 スタートアップとの連携「有機米デザイン株式会社」 ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 髙橋:農業を取り巻く環境の変化に対し、当社に於いても対応を検討し、2016年、2017年頃より様々なスタートアップとの連携を具体的に進めることとなりました。GPS、ドローンの活用等、農業生産者の生産性向上等が見込まれる技術導入の取り込みを目指し、組織横断的に取り組む体制が2020年に稼働、従来と比べスピード感が速くなり、効果的な取り組みが試されつつあると認識しています。 ─―生産性向上を目指す技術導入の取組から、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 髙橋:農業生産者の効率向上に向け、新商品や新サービスの提供をスタートアップとの連携、協業により取り組む意向です。技術の多様化に対しては当社単体での取り組みには限界があり、スタートアップとの連携、協業により対応しています。2022年6月には有機米デザイン株式会社に出資しました。今後もスタートアップとの連携、協業に向けた取り組みを強化していきます。 左から有機米デザイン株式会社 山中代表、井関農機株式会社 冨安社長 ─―ではもし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 髙橋:外部環境に柔軟に対応できず業績面に影響を及ぼす可能性もあったと思います。また企業イメージという点でマイナスになると思います。 初期段階から密な意見交換・連携でスピード保つ ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 髙橋:過去に、実証・検証後に事業展開の見直しが図られたことがありました。また、サービス開始にも至らなかったこともあり、事業化を進めるにあたり、慎重に対応しています。 こうした課題の解決のために、外部の技術、知識の活用に向け、スタートアップとの関係構築を進めています。 また、当初の段階では密に意見交換、情報交換を行い、情報共有し、事業連携を進めるように取り組んでいます。 ─―実証後に上手くいかなかったという話は他の企業様でもうかがいます。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 髙橋:具体的には、協力パートナーと一緒にアクセラレータープログラムを活用し、スタートアップとの関係構築を進めています。 課題としては、アクセラレータープログラムを活用し、当社としては前向きに交渉を進めたが、相手方企業にはその気がなく交渉が進展しなかったことがありました。 こうした課題の解決のために、情報収集の精度を上げるべく、様々な情報収集に取り組んでいます。 ─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 髙橋:具体的には、NDAの締結、財務情報の精査に取り組んでいます。 課題としては、NDA締結後、トップ交代があり事業の取り組み方に変化が見られた場合がありました。 こうした課題の解決のために、交渉の当初より意見交換を密に行い、意識を共有するようにしています。また、現在の総合企画部戦略企画室が稼働後は意思決定の迅速化が図られ、当社として取り組むべき課題が明確化したことにより、オープンイノベーションの有効活用が図られつつあります。 ─―オープンイノベーションの有効活用を見出しているのは素晴らしいですね。続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 髙橋:自治体との実証を参照しながら、事業計画に活かしています。 課題としては、品質に対する意識が当社と外部企業、特にスタートアップでは異なり、その溝を埋めるには時間を要することですね。 こうした課題の解決のために、意見交換を密に行い、事業化に際しても問題発生を抑えるように努めています。また当社としてはスタートアップとの連携は一部の出資にとどめ、事業化に関してはスタートアップと協議の上進めていくことを基本としています。 ─―続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 髙橋:具体的には、商品の販売ですね。 課題としては、原価が上昇し販売価格の修正に迫られた場面が起こりました。 こうした課題の解決のために、生産ノウハウの提供、資材の代行仕入、原価低減に向けた取り組みを進めています。 有機米デザイン株式会社との連携商品「アイガモロボ」 事業分野を住み分けてスタートアップと連携する ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 髙橋:国などの研究、実証プロジェクトを参照し、様々な部門を巻き込みながら事業化に取り組んでいます。 ─―また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。 髙橋:スタートアップを含む外部企業とは情報交換を図り、当社がこれまで手掛けていた事業領域以外の分野のサービス展開を取り組むようにしています。交渉初期の段階では密に情報交換を行い、事業化に向けてはスタートアップが主体となって推進できる体制を取っています。スタートアップは開発先行等の優位性を有する企業も多く、市場の変革者となりえることもあると思います。 ─―最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 髙橋:スタートアップとの連携、協業に関してはリスクも存在し、そのリスク軽減への支援が可能であればお願いしたいです。様々な情報が混在していますので、情報精度、対価等が適正なものを提供いただければありがたいですね。 取材対象プロフィール 井関農機株式会社 総合企画部 戦略企画室 副室長髙橋 努氏 2020年、組織変更が実施され、新規事業計画等を立案する部署として総合企画部内に新設、組織横断的に新規事業の企画立案提言を担うこととなった。担当者高橋氏は総合企画部戦略企画室に所属し、現在は副室長の役職にある。具体的な業務としてはグループ事業に於ける経営戦略策定を行うもので、特に新規事業の企画立案提言を行う。2022年6月スタートアップ「有機米デザイン株式会社」への出資に際しては担当部署と協力しながら推進を行った。 インタビュー実施日:2022年12月12日
「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、豊かな社会の実現へ貢献する、井関農機株式会社 総合企画部 戦略企画室 副室長の髙橋 努氏に話を伺った。
髙橋 努氏
スタートアップとの連携「有機米デザイン株式会社」
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
髙橋:農業を取り巻く環境の変化に対し、当社に於いても対応を検討し、2016年、2017年頃より様々なスタートアップとの連携を具体的に進めることとなりました。GPS、ドローンの活用等、農業生産者の生産性向上等が見込まれる技術導入の取り込みを目指し、組織横断的に取り組む体制が2020年に稼働、従来と比べスピード感が速くなり、効果的な取り組みが試されつつあると認識しています。
─―生産性向上を目指す技術導入の取組から、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
髙橋:農業生産者の効率向上に向け、新商品や新サービスの提供をスタートアップとの連携、協業により取り組む意向です。技術の多様化に対しては当社単体での取り組みには限界があり、スタートアップとの連携、協業により対応しています。2022年6月には有機米デザイン株式会社に出資しました。今後もスタートアップとの連携、協業に向けた取り組みを強化していきます。
左から有機米デザイン株式会社 山中代表、井関農機株式会社 冨安社長
─―ではもし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
髙橋:外部環境に柔軟に対応できず業績面に影響を及ぼす可能性もあったと思います。また企業イメージという点でマイナスになると思います。
初期段階から密な意見交換・連携でスピード保つ
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイディアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
髙橋:過去に、実証・検証後に事業展開の見直しが図られたことがありました。また、サービス開始にも至らなかったこともあり、事業化を進めるにあたり、慎重に対応しています。
こうした課題の解決のために、外部の技術、知識の活用に向け、スタートアップとの関係構築を進めています。
また、当初の段階では密に意見交換、情報交換を行い、情報共有し、事業連携を進めるように取り組んでいます。
─―実証後に上手くいかなかったという話は他の企業様でもうかがいます。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
髙橋:具体的には、協力パートナーと一緒にアクセラレータープログラムを活用し、スタートアップとの関係構築を進めています。
課題としては、アクセラレータープログラムを活用し、当社としては前向きに交渉を進めたが、相手方企業にはその気がなく交渉が進展しなかったことがありました。
こうした課題の解決のために、情報収集の精度を上げるべく、様々な情報収集に取り組んでいます。
─―続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
髙橋:具体的には、NDAの締結、財務情報の精査に取り組んでいます。
課題としては、NDA締結後、トップ交代があり事業の取り組み方に変化が見られた場合がありました。
こうした課題の解決のために、交渉の当初より意見交換を密に行い、意識を共有するようにしています。また、現在の総合企画部戦略企画室が稼働後は意思決定の迅速化が図られ、当社として取り組むべき課題が明確化したことにより、オープンイノベーションの有効活用が図られつつあります。
─―オープンイノベーションの有効活用を見出しているのは素晴らしいですね。続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
髙橋:自治体との実証を参照しながら、事業計画に活かしています。
課題としては、品質に対する意識が当社と外部企業、特にスタートアップでは異なり、その溝を埋めるには時間を要することですね。
こうした課題の解決のために、意見交換を密に行い、事業化に際しても問題発生を抑えるように努めています。また当社としてはスタートアップとの連携は一部の出資にとどめ、事業化に関してはスタートアップと協議の上進めていくことを基本としています。
─―続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
髙橋:具体的には、商品の販売ですね。
課題としては、原価が上昇し販売価格の修正に迫られた場面が起こりました。
こうした課題の解決のために、生産ノウハウの提供、資材の代行仕入、原価低減に向けた取り組みを進めています。
有機米デザイン株式会社との連携商品「アイガモロボ」
事業分野を住み分けてスタートアップと連携する
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
髙橋:国などの研究、実証プロジェクトを参照し、様々な部門を巻き込みながら事業化に取り組んでいます。
─―また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの調査を活かすための配慮などあれば教えてください。
髙橋:スタートアップを含む外部企業とは情報交換を図り、当社がこれまで手掛けていた事業領域以外の分野のサービス展開を取り組むようにしています。交渉初期の段階では密に情報交換を行い、事業化に向けてはスタートアップが主体となって推進できる体制を取っています。スタートアップは開発先行等の優位性を有する企業も多く、市場の変革者となりえることもあると思います。
─―最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
髙橋:スタートアップとの連携、協業に関してはリスクも存在し、そのリスク軽減への支援が可能であればお願いしたいです。様々な情報が混在していますので、情報精度、対価等が適正なものを提供いただければありがたいですね。
取材対象プロフィール
井関農機株式会社 総合企画部 戦略企画室 副室長
髙橋 努氏
2020年、組織変更が実施され、新規事業計画等を立案する部署として総合企画部内に新設、組織横断的に新規事業の企画立案提言を担うこととなった。担当者高橋氏は総合企画部戦略企画室に所属し、現在は副室長の役職にある。具体的な業務としてはグループ事業に於ける経営戦略策定を行うもので、特に新規事業の企画立案提言を行う。2022年6月スタートアップ「有機米デザイン株式会社」への出資に際しては担当部署と協力しながら推進を行った。