時代のニーズに応えて、GIS技術をベースに独自のネットワークを駆使してお客さまと共に利益を追求し成長する、B社のY氏に話を伺った。 業績の維持・拡大のためにも他社との連携は必須 ─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。 Y氏:当社が扱うGIS(地理情報システム)は他社や他団体とのシステム連携が無いと事業の進展が見込めないため、当社は長年にわたって他社との連携を進めてきました。ただし、長年取引関係を有する企業との連携はアイデアの発想が硬直的であり、新規事業が前進するようなアイデアの発想が無かったため、取引関係がある企業以外との連携開始を含め、オープンイノベーションが推進されるような部署を作る必要性がありました。 ─―オープンイノベーションを推進する部署の立ち上げというところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。 Y氏:目的は新事業創出を設定しています。理由としては、当社が提供するGISをこれまで提供実績のないプラットフォームシステムに組み込み、新規事業にGISを活用していく方針を会社として出しました。現在、複数の事業者と連携に向けた打ち合わせを進めていますが、本格的な事業化にはさらに他社との提携・連携の相談に対しては前向きに話を聞いていく姿勢にあります。他社との連携が業績の維持・拡大に必要不可欠であると感じています。 ─―ではもし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。 Y氏:これからオープンイノベーションを本格化しているため、想定を具現化し難いですね。ただ、これまでもオープンイノベーションまではいかなくとも、他社との連携はGISの販売には必要不可欠であるため、業績面にさほど影響は生じないものとみています。 代表が自ら参画し、オープンイノベーションを進める ─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイデアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 Y氏:既存の民間クライアントとの商談の中で新たなビジネスモデル確立を目指した打ち合わせを進めていますが、他社とのシステム連携環境で相違が生じる事も多々あり、打ち合わせ以上の具現化には至らない事があります。 課題としては、初期のビジネスモデルは、具体的な収益までは考えられず、まずは事業化に乗せるかどうかが重視されるため、長期的に利益をもたらす新規事業を開発するのは難しいと感じています。 ─―長期的な利益をもたらす新規事業を開発するのは、なかなか難しいですね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 Y氏:オープンイノベーションに取組む事業部では、新規事業が社内全体の活動になるようにイノベーションポートのハブとしての役割を持ち、既存顧客を含めた外部との連携を調整する役割を担っています。 また、オープンイノベーションに係る部署では対応し切れない案件については、代表も案件に参画し、オープンイノベーション活用の推進を担っています。 ─―代表自らが参画し、オープンイノベーションを推進しているのですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 Y氏:社名公開はしないものの、社名を伏せた上でプラットフォームを活用した連携相手の募集を進めています。その他、社内のニーズに沿った連携相手の募集、展示会等の企業が集まるイベント等での情報交換の機会、既存販路や既存事業と異なる外部リソースの活用も含め、連携相手の探索は積極的に進めています。 課題としては、連携相手候補との商談は、ビジョンとしてはお互いのニーズが合致する事もありますが、実際のシステム連携の面で提携相手との連携がうまく進まず、ペンディングとなるケースが多々あることですね。 ─―連携相手との進捗が上手くいかないことは他の企業様でもうかがいます。では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。 Y氏:互いの違いで今後の連携促進を阻害することが無いよう、事業連携の機会を常に模索しています。 ─―協業相手との連携では常に模索することがポイントなのです。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 Y氏:NDAは商談の初期に締結し、連携推進に必要な書類面で進捗が滞る事が無いように意識しています。 課題としては、まずは今後の連携余地があるか否か、またそのシステム連携が行えるか否かの環境確認を早期に進める必要があり、ビジョンの共有をしています。しかし結果的にシステム連携に不具合が見つかるなどして実現には至らず、時間的なロスが生じたケースがありました。 こうした課題解決のために、NDAは早期に締結しています。その後、連携を進めていく可能性が高い相手先程、システム連携がうまく行くのかの確認を進めた上で、実現可能なビジョンを共有していく事を心がけています。 また、システム連携の可否が当社におけるオープンイノベーションの可否に関わるため、その確認を第一優先として進めていくようにしています。 ─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 Y氏:ここでは実証実験を早い段階で行い、開発した新サービスが社会にどう影響するのか、求められているものかを確認する必要がありますね。 課題としては、他社との連携ありきのGISであるため、新たな連携先の開拓に加えて既存顧客との新たな領域での連携も進めていかなければならないということですね。また、実証実験前に感触が良い連携相手と商談が順調に進んでいたものの、実証実験段階で何らかの問題にぶつかるケースが多いことも挙げられます。 こうした課題解決のために、システム連携の幅を広げ、多様な外部連携を取り込める環境を整備していきたいと考えています。 ─―実証実験から製品化・収益化に至るまでに時間を要する企業様も多いです。続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。 Y氏:GISと他社連携で時空間情報を活用したシステム開発。日本における災害対策システムの開発等を行っています。 課題としては、他社との連携においてはシステム連携の観点で問題が生じ、連携が頓挫するケースがあることですね。 こうした課題解決のために、他社との連携にあたって、ビジョンの共有以前に、連携可能性が高い先に対しては、連携可否に重大な影響を与えるシステム連携面で早期の問題解決が必要であると感じています。 将来性を見据えたシステムの連携 ─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。 Y氏:昨今コンプライアンスやセキュリティチェックが厳しくなっている中、情報漏洩リスクを避けるべく、オープンイノベーションの種が見つかった段階で早期にNDAを締結しています。また、将来的な連携ビジョンが確立し始めた頃にはシステム連携面で将来的に不具合が生じないか、確認・検証する事を意識していますね。 ─―将来的な連携ビジョンを共有し、連携システムの強化がポイントなのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの長所を活かすための配慮などあれば教えてください。 Y氏:スタートアップとの連携は今までに無く、今後も連携予定・可能性は低いですね。 ─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。 Y氏:イノベーションの発展にはリスクは常に付きまとうと感じています。官公庁や自治体の観点から、数少ない選ばれた企業にのみ支援を行うのでは無く、特定業種の競合先にも支援の輪を広げ、競争させる必要があると思います。これは、官公庁や自治体の立場からみても、助成対象先から見ても必要な事であり、日本の産業発展には欠かせないものとみています。 取材対象プロフィール B社Y氏 オープンイノベーションの取り組みを推進する部署は「時空間DX事業部イノベーション営業部門」が担っており、具体的な業務としては、これまで当社が取引関係を築いてきた企業や、取引関係には至らないまでもコネクションを有している企業との連携・取引関係の維持・拡大の中で、従来のビジネスモデル以外の新規事業の開発を担う部署となっている。 オープンイノベーションの取り組みは社長も深く関与し、持続的な事業成長に向けた取り組みとして注力している。 インタビュー実施日:2022年12月16日
時代のニーズに応えて、GIS技術をベースに独自のネットワークを駆使してお客さまと共に利益を追求し成長する、B社のY氏に話を伺った。
業績の維持・拡大のためにも他社との連携は必須
─―オープンイノベーションの取組を始められた経緯や始められる前に感じられていた課題について教えてください。
Y氏:当社が扱うGIS(地理情報システム)は他社や他団体とのシステム連携が無いと事業の進展が見込めないため、当社は長年にわたって他社との連携を進めてきました。ただし、長年取引関係を有する企業との連携はアイデアの発想が硬直的であり、新規事業が前進するようなアイデアの発想が無かったため、取引関係がある企業以外との連携開始を含め、オープンイノベーションが推進されるような部署を作る必要性がありました。
─―オープンイノベーションを推進する部署の立ち上げというところから、どのようにオープンイノベーションの目的を設定されましたか。目的の達成状況と合わせて教えてください。
Y氏:目的は新事業創出を設定しています。理由としては、当社が提供するGISをこれまで提供実績のないプラットフォームシステムに組み込み、新規事業にGISを活用していく方針を会社として出しました。現在、複数の事業者と連携に向けた打ち合わせを進めていますが、本格的な事業化にはさらに他社との提携・連携の相談に対しては前向きに話を聞いていく姿勢にあります。他社との連携が業績の維持・拡大に必要不可欠であると感じています。
─―ではもし、オープンイノベーションを実施していなかったらどうなっていたかと思いますか。
Y氏:これからオープンイノベーションを本格化しているため、想定を具現化し難いですね。ただ、これまでもオープンイノベーションまではいかなくとも、他社との連携はGISの販売には必要不可欠であるため、業績面にさほど影響は生じないものとみています。
代表が自ら参画し、オープンイノベーションを進める
─―続いて各ステージにおける具体的な取組についてお伺いできればと存じます。まず、事業アイデアの棚卸・ビジネスモデル検討における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
Y氏:既存の民間クライアントとの商談の中で新たなビジネスモデル確立を目指した打ち合わせを進めていますが、他社とのシステム連携環境で相違が生じる事も多々あり、打ち合わせ以上の具現化には至らない事があります。
課題としては、初期のビジネスモデルは、具体的な収益までは考えられず、まずは事業化に乗せるかどうかが重視されるため、長期的に利益をもたらす新規事業を開発するのは難しいと感じています。
─―長期的な利益をもたらす新規事業を開発するのは、なかなか難しいですね。課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
Y氏:オープンイノベーションに取組む事業部では、新規事業が社内全体の活動になるようにイノベーションポートのハブとしての役割を持ち、既存顧客を含めた外部との連携を調整する役割を担っています。
また、オープンイノベーションに係る部署では対応し切れない案件については、代表も案件に参画し、オープンイノベーション活用の推進を担っています。
─―代表自らが参画し、オープンイノベーションを推進しているのですね。続いて、連携相手の探索における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
Y氏:社名公開はしないものの、社名を伏せた上でプラットフォームを活用した連携相手の募集を進めています。その他、社内のニーズに沿った連携相手の募集、展示会等の企業が集まるイベント等での情報交換の機会、既存販路や既存事業と異なる外部リソースの活用も含め、連携相手の探索は積極的に進めています。
課題としては、連携相手候補との商談は、ビジョンとしてはお互いのニーズが合致する事もありますが、実際のシステム連携の面で提携相手との連携がうまく進まず、ペンディングとなるケースが多々あることですね。
─―連携相手との進捗が上手くいかないことは他の企業様でもうかがいます。では課題解決のために取り組まれていることがあれば教えてください。
Y氏:互いの違いで今後の連携促進を阻害することが無いよう、事業連携の機会を常に模索しています。
─―協業相手との連携では常に模索することがポイントなのです。続いて、情報交換・協業における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
Y氏:NDAは商談の初期に締結し、連携推進に必要な書類面で進捗が滞る事が無いように意識しています。
課題としては、まずは今後の連携余地があるか否か、またそのシステム連携が行えるか否かの環境確認を早期に進める必要があり、ビジョンの共有をしています。しかし結果的にシステム連携に不具合が見つかるなどして実現には至らず、時間的なロスが生じたケースがありました。
こうした課題解決のために、NDAは早期に締結しています。その後、連携を進めていく可能性が高い相手先程、システム連携がうまく行くのかの確認を進めた上で、実現可能なビジョンを共有していく事を心がけています。
また、システム連携の可否が当社におけるオープンイノベーションの可否に関わるため、その確認を第一優先として進めていくようにしています。
─―続いて、PoC・研究開発における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
Y氏:ここでは実証実験を早い段階で行い、開発した新サービスが社会にどう影響するのか、求められているものかを確認する必要がありますね。
課題としては、他社との連携ありきのGISであるため、新たな連携先の開拓に加えて既存顧客との新たな領域での連携も進めていかなければならないということですね。また、実証実験前に感触が良い連携相手と商談が順調に進んでいたものの、実証実験段階で何らかの問題にぶつかるケースが多いことも挙げられます。
こうした課題解決のために、システム連携の幅を広げ、多様な外部連携を取り込める環境を整備していきたいと考えています。
─―実証実験から製品化・収益化に至るまでに時間を要する企業様も多いです。続いて、事業化における具体的な取組内容や発生した課題などについて教えてください。
Y氏:GISと他社連携で時空間情報を活用したシステム開発。日本における災害対策システムの開発等を行っています。
課題としては、他社との連携においてはシステム連携の観点で問題が生じ、連携が頓挫するケースがあることですね。
こうした課題解決のために、他社との連携にあたって、ビジョンの共有以前に、連携可能性が高い先に対しては、連携可否に重大な影響を与えるシステム連携面で早期の問題解決が必要であると感じています。
将来性を見据えたシステムの連携
─―PoC・研究開発のスピードを加速するためには、助け合いの文化や部署の枠を超えた交流が重要という分析結果が出ておりますが、御社においてそうした内容で何か特別な工夫をされていましたら教えてください。
Y氏:昨今コンプライアンスやセキュリティチェックが厳しくなっている中、情報漏洩リスクを避けるべく、オープンイノベーションの種が見つかった段階で早期にNDAを締結しています。また、将来的な連携ビジョンが確立し始めた頃にはシステム連携面で将来的に不具合が生じないか、確認・検証する事を意識していますね。
─―将来的な連携ビジョンを共有し、連携システムの強化がポイントなのですね。また、スタートアップと協業を行う上で、スピードを落とさないための工夫やスタートアップの長所を活かすための配慮などあれば教えてください。
Y氏:スタートアップとの連携は今までに無く、今後も連携予定・可能性は低いですね。
─―では最後に行政に対する意見や要望がありましたら教えてください。
Y氏:イノベーションの発展にはリスクは常に付きまとうと感じています。官公庁や自治体の観点から、数少ない選ばれた企業にのみ支援を行うのでは無く、特定業種の競合先にも支援の輪を広げ、競争させる必要があると思います。これは、官公庁や自治体の立場からみても、助成対象先から見ても必要な事であり、日本の産業発展には欠かせないものとみています。
取材対象プロフィール
B社
Y氏
オープンイノベーションの取り組みを推進する部署は「時空間DX事業部イノベーション営業部門」が担っており、具体的な業務としては、これまで当社が取引関係を築いてきた企業や、取引関係には至らないまでもコネクションを有している企業との連携・取引関係の維持・拡大の中で、従来のビジネスモデル以外の新規事業の開発を担う部署となっている。
オープンイノベーションの取り組みは社長も深く関与し、持続的な事業成長に向けた取り組みとして注力している。